口・のど(咽喉頭)の働き

のどには、鼻から取り入れた空気を肺へ送る管の役目をしており、さらに細かいゴミを除いたり、外界からの細菌、ウィルスに対する防御の働きもあります。また、口には食べ物を取り入れ、噛み、飲み込む、味を感じる働きがあります。その奥には、喉頭(こうとう)といって、気管と食堂の入口で非常に複雑な働きをし、声を出したり、食物と空気の入る所を間違えないようにコントロールしています。
咽頭は、扁桃腺(口蓋扁桃)、アデノイド、舌根扁桃、咽頭側索、弧立リンパ節などのリンパ系扁桃組織が、ぐるりとのどを取り囲むワルダイエル咽頭輪を形成し、外界からの細菌などの侵入にそなえた自衛隊の役目をしています。もちろん発声、食物嚥下などの働きもしています。つまり、風邪などの時もっとも活躍するのが、咽頭の働きです。幼少時から少年期にかけアデノイド、口蓋扁桃は大きくなり、成人になるに従って小さくなっていきます。

病気の解説

口腔内は常に損傷・修復を繰り返している臓器です。小さな口内炎でも食物がしみたり、摂食障害になることもあります。原因はさまざまで風邪などのウィルスによるもの、カビの仲間によるもの、入れ歯が当たってできるもの、ビタミン欠乏、全身的な貧血などが、原因となることがあります。
まれではありますが、ベーチェット病、悪性腫瘍、薬剤性(特にリウマチ関連薬)、血液疾患のはじまりなど重大な疾患が、かくされている場合もあり、耳鼻科、歯科など専門医にしっかり診断をして、治療をされることが大切と思われます。一般的には、うがいなどで、口内を清潔に保ち、傷面に適切な薬を塗ったり、原因となるものに対する対策がとられます。

おもしろい名前ですが、これは、口の中には唾液をつくる器官がありますが、唾液を作って口の中へ管を通って出てくるわけですが、何らかの原因でその管がつまり、唾液がたまって、風船のようにふくれてくるものです。基本的には手術が必要になりますが、薬剤で癒着させて治療する方法もあります。

なんらかの原因で石灰化したものが塊となり、顎下腺、また耳下腺に詰まることによって発症します。唾液が出る管につまったり、炎症をおこして痛み、とくに食事をとったときにハレ、痛みが強まります。指で石をふれる場合もあります。顎下腺の微細な石灰物質は悪性腫瘍が隠れていることがあるので注意が必要です。
ガムやアメなどを食べて、唾液分泌を促進させると自然排石することもありますが、基本的には、手術による摘出術が必要になります。
唾液腺造影、エコー、CT、MRIなどの検査をしてどこに石が出来ているかによって、手術方法も決定されます。

舌縁部(舌の横の部分)によく発生します。ですから喫煙や歯(特に入れ歯)による慢性的な刺激が重要な原因のひとつと考えられています。初発症時舌炎、口内炎と余り差がありません。
耳鼻科医の診察を受け、所見をよくみて、あやしければ一部を切除して、癌かどうか病理検査をし、診断します。治療は放射線治療、手術、化学療法などを癌の性質、広がり、転移の有無によって選択されます。大きな設備も必要で、適切な施設への紹介が必要になります。
口腔内の舌側の口内炎はあなどらず、必ず完治するまで耳鼻科医に診察してもらいましょう。どの年齢層においても発生し、早期診断・早期治療がとても大事な疾患です。

口を開いてのどの奥の両側に、そら豆大ぐらいの大きさの、イチゴのような表面のものがみえますが、これが口蓋扁桃、いわゆる扁桃腺です。外からの細菌などの侵入を見張っています。これが強力な病原菌が入ったり、体力がおとろえていると炎症をおこし、扁桃は赤くなり、膿がついたり腫れたりして痛み、発熱等の炎症症状をおこします。
治療としては、うがいなど、のどの清潔、殺菌と、病原菌をやっつける抗菌剤、及び症状をやわらげる消炎、鎮痛、解熱剤の投与、及び全身的には、安静、水分の摂取などでしょう。ただし、炎症の程度、その合併症については様々ですので扁桃を常時観察して、炎症が扁桃を超えて波及している場合は、切開や摘出術などが必要になります。扁桃周囲膿瘍をおこしていれば、緊急の切開、排膿手術、及び全身管理が必要となりますし、のどの口を開いて見える範囲だけでなく、もっと下方へ炎症がひろがって、喉頭蓋炎・仮性クループなどを、合併していれば呼吸困難、窒素死などを来たしたりと、不幸な結果になることもあります。
また、原因菌のなかに溶連菌関連の扁桃炎では腎炎(IgA腎症)、掌跡膿疱症、胸肋鎖骨過形成、リウマチ性疾患、尋常性乾蘇などの病気をおこすと言われています。そのため、適切な抗生剤を適切な必要期間しっかりと内服しないといけない場合があります。
その他には扁桃が大きいと、睡眠中にのどを閉塞して、いびきとか無呼吸を引き起こして、睡眠時無呼吸症候群になる可能性もあります。これについては、このあとにある別項の”睡眠時無呼吸症候群”を参照してください。
”扁桃肥大”というお知らせを学校の耳鼻科健診のあとにもらってこられることがあろうかと思いますが、これは、健診では、詳しく病状などを児童から聞くことが出来ませんので、問題を抱えている可能性のある扁桃肥大を指摘しています。耳鼻科専門医を受診して、必要に応じて手術などを検討します。

のどの炎症で扁桃炎もこの一種ですが、風邪は色々のウィルス、細菌などによってひきおこされます。麻疹、夏風邪、ヘルペス等、インフルエンザなど、のどの所見に各々特徴があります。
また、たばこ、汚染された空気などによっても、炎症をおこす原因となります。これがもう少し下の気管までひろがれば、声帯などを含む喉頭まで炎症をおこし、喉頭炎で声がかれるということになります。
声が枯れている場合、喉頭のむくみを伴っている場合があり、息が急に詰まって呼吸困難になることがあります。
早期に喉頭ファイバーで確認し、必要があれば入院での気道管理による加療が必要になります。
嚥下困難感や声がれがある場合には必ず早期に受診をお勧めします。

口を開いただけでは、殆ど見ることはできません。鼻咽腔といって、鼻の奥の突き当り、のどちんこの後上裏にありますので、ファイバースコープでの診察が必要となります。アデノイドは、通常3、4才ごろより最も大きくなり、思春期までに萎縮して小さくなります。このアデノイド増殖は、中耳炎を起こす原因になることがあります。また、アデノイドが大きいと鼻から呼吸ができないため、鼻づまり、いびき、口をポカンとひらいている、よだれが出やすいなどの症状があり、鼻の奥と中耳をつなぐ耳管を圧迫、閉鎖して滲出性中耳炎(急性中耳炎のように痛みはないが、軽度の難聴)をおこす原因となります。
小児期の睡眠時低・無呼吸症候群では、このアデノイド増殖症と扁桃肥大が、原因となることがあり、これも耳鼻科でしっかり診察して、適切な診断のもとで手術の適応を決めます。

嗄声(声がれ)が、主症状です。声がれは、喉頭に何らかの異常があればおこります。ですから、風邪などで声帯炎があってもおこり、たばこ、声の使い過ぎだけでも声がれはおこります。脳に問題があり、声帯を動かす神経が麻痺してもおこります。また、甲状腺、食道癌、肺癌などの悪性腫瘍や大動脈瘤、縦隔洞腫瘍などでも声がれがおこる可能性もあります。声帯ポリープ結節、ポリープ様声帯などでも声がれがおこります。
ですから声の調子がおかしい・悪い時は、声帯の直接の観察が必要です。口をあけただけではみることは不可能で、喉頭ファイバーでの観察が大事です。声の調子がおかしい時は、喉頭ファイバーを備えた耳鼻科を受診され、早期に診断をつけ、各々の治療方針に従って治療をしましょう。喉頭癌は早期発見の比較的容易な癌です。ぜひ早期発見、早期治療を心がけて下さい。

首をさわると人によっては、リンパ節(しこり)をさわれる方がおられると思います。それがわかったからといって、過剰に心配される必要はありません。色々の原因でリンパ節は、腫脹します。風邪とか、のどの炎症でもはれますし、また、頭頚部の悪性腫瘍の転移・結核などでも腫脹します。
超音波検査である程度良性か悪性かの判断は可能です。頭頚部の専門家である耳鼻科を受診し、判定してもらいましょう。

首から上は大変敏感に所であり、とくにのどに関して、違和感、閉塞感、異物感、熱感、乾燥感など、非常に気にしている方を咽喉頭異常感症と呼びます。
まず患者さんの訴えに従ってのどを、充分観察し、はっきりと炎症・腫瘍などの変化がないことを確かめます。目に見える変化がない場合が多く、診断と治療に難渋することが多くあります。患者様と相談し、アレルギーの後鼻漏・逆流性咽頭炎・唾液分泌低下・咽喉頭カンジダ・嚥下機能低下など様々な原因を疑っての治療となります。