耳の働き

音は、外耳(耳介・外耳道)を通って、中耳(鼓膜・耳小骨)を伝わり、内耳から聴神経をへて脳へ伝わって音として認識されます。これらに病気がおこり色々な症状をひきおこします。

外耳では水泳の後とか、耳そうじの後でおこったりする傷、オデキ、湿疹などがよくみられます。また、耳アカもしばしばみられます。症状は痛み、痒み、耳だれ、難聴などです。中耳では耳そうじの綿棒、平手打によって鼓膜が破れたり、風邪からおこる急性中耳炎、滲出性中耳炎、慢性中耳炎などがよくみられます。症状は、痛み、発熱、耳ダレ、難聴、耳閉感、ことばの遅れなどです。特に中耳は鼻の奥とつながっています。内耳は蝸牛と前庭からできており、蝸牛では老人性難聴、突発性難聴、風邪などウィルスによる難聴、遺伝性難聴、中耳炎の合併症などで、症状は難聴、耳鳴り、耳閉感などです。前庭は三半規管などがありメニエル氏病、前庭神経炎、良性発作性頭位眩暈症などでめまいなどを症状とします。また、その奥の脳につながる部位では、聴神経腫瘍、顔面神経麻痺、頭蓋底骨折など重要な疾患がありまた、全身的な高血圧、糖尿病、血液疾患でも耳の病気はおこってきます。
各々の症状によって目でみてわかるもの、聴力検査、レントゲン、CT等、また、平衡機能検査(めまいの検査)、全身検査によって、診断がえられます。

病気の解説

外耳及び外耳道に炎症がおきたり、おデキができて、かゆみ、痛み、耳ダレが出た時に、難聴もおこります。風呂、水泳のあとなどに耳をさわることによっておこることがあります。また、顔面神経麻痺の前駆症状として起こることもあります。
原因も細菌・真菌・ウィルス・アレルギーなどさまざまで、処置及び使用薬剤が異なりますので耳鼻科専門医の的確な診断によって、適切な治療が必要です。必要以上の耳そうじはできるだけ控えるようにしましょう。

耳そうじ、ケンカ、スポーツ、事故などによって、外耳道をこすって傷つけたり、鼓膜が破れたり、時には中耳、内耳に傷害が及ぶこともあり、受傷時、痛み、出血、難聴、耳がつまった感じなどがおこります。
受傷した場合は出来るだけ早急に耳鼻科医を受診し、どのような状態なのかを確かめておいてほうがいいです。単純な鼓膜の損傷であれば、ある程度の大きさの損傷でも感染コントロールと的確な処置をすれば十分に治癒が可能です。

主として風邪にひきつづいて、小学生以下の子供さんにおこることが大多数です。
特に小学生低学年以下の子供さんでは、風邪をひいた子供さんの5~10%が、耳に何らかの合併症をおこしているという報告もあります。耳痛、耳ダレ、発熱などではじまりますが、物事を充分表現できない幼少時であれば、風邪薬を飲んでいるのに機嫌が悪い、ねむりが悪いとか、熱が下がらないとかは要注意です。
風邪などの細菌・ウィルスが鼻の奥と中耳をつなぐ耳管という管を通って、中耳へ入り炎症をおこし、発熱、耳痛、そして最終的には耳ダレが発生します。これらの各段階で耳鼻科を受診されるわけですが、鼓膜切開が必要な時もあれば、3~4日経過をみて処置の判断をするケースもあります。
原因となっている鼻・のどの処置(風邪の処置)が必要で鼻汁の吸引、ネブライザー療法、また、全身的に抗菌剤、消炎剤等が投与されます。また、中耳炎を風邪のたびに、くり返すという子供さんも多いので一度、中耳炎を起こされた子供さんは、風邪→中耳炎を、気をつけて下さい。中耳炎は、耳管の形が成人の形に完成すると、とたんに発生頻度がへってきます。その時期までは、きちんと治療をして難聴をおこす滲出性中耳炎・慢性中耳炎・癒着性中耳炎・真珠腫性中耳炎などにならないように注意していく必要があります。
患児によっては鼻アレルギーの治療、扁桃炎の手術、アデノイドの手術によって反復する中耳炎を予防するようなことを考える必要がある場合もあります。

簡単に言えば、鼓膜が本来の位置より内側(中耳側)へ陥凹して、さらには、中耳にややねばい液体(滲出液)がたまって、鼓膜の動きが制限され(動きにくくなるため)、軽度ないし中等度の難聴をおこしている状態です。これも小学生低学年以下の方がほとんどで、中耳炎から引きつづいておこることが多いです。ちょうど、高い山、飛行機、新幹線等で耳がツーンとしたような感じで、もう少し程度は強いと思われる状態です。痛みはなく、耳がふさがった感じ、軽度の難聴、耳鳴がおこります。
年少児に多く、これらの症状を訴えることは稀で、気付かれずに経過して、健康診断などで指摘されたり、返事がにぶいとか、きき返すとかで、気づかれることもあります。この時期の子供は、言葉をおぼえたり、正しい発音をしたり、学校などで基礎学力のつく時期ですので、そこへの影響がでることもあります。
検査、治療は、患者様によって発病の原因が多少異なりますので、専門医で診療・検査でこれらを的確には把握して治療をしていきます。保存的加療(内服)がメインとなりますが、これで改善が思わしくない場合、鼓膜切開をして滲出液を吸入したり、それでも鼓膜切開孔が閉鎖し、再び鼓膜が陥凹してくるようであれば、鼓膜に穴をあけ、シリコン製などのチューブを入れ、常時、空気が外界と中耳を流通し、中耳の繊毛運動を活発にして治癒をうながす治療が必要になることもあります。それでも治癒にいたらない場合、アデノイド、扁桃の手術を検討することもあります。

滲出性中耳炎とは反対で、耳管が開きすぎている状態で、高齢者や急激なダイエットなどが原因でおこります。症状は耳のつまった感じ、圧迫感、テレビなどの外界からの音は、問題ないのに自分の声のみが聞こえ方がおかしい、耳鳴などです。
鼓膜は異常なく、聴力も正常、各種検査も正常、耳鼻科医がよく病歴、症状をくわしく注意しての判断になります。
耳管内へ薬剤を噴霧したりして治療いたします。

ある時から急におこる難聴で耳鳴、めまいを伴うこともあります。
このカテゴリーに入る疾患には突発性難聴、急性感音難聴、低音型突発性難聴、正円窓破裂、前底水管拡大などまだ、充分原因病態が解明されていないものがあり、各種研究班ができて研究中です。
突発性難聴がおこったときの第1のポイントは、難聴がおきたら出来るだけ早期に耳鼻科医を受診し、正確な診断をし、治療に入ることが必要です。時期を失うと治るものも治らなくなり、将来に難聴、耳鳴を残すことになります。(発症から1ヶ月以内が望ましい)
診断治療は、鼓膜に異常なく純音聴力検査では、各種程度の感音難聴を示し、中耳機能をみるティンパノメトリーは正常です。広く専門医の間では認知されており、ステロイド、血管拡張剤、ビタミン剤、神経機能賦活剤が投与されます。また、高気圧酸素療法、星状神経節ブロック、インターフェロン等が使われることがあります。難聴の程度によって、治療法が選択されますが、外来、入院加療に選別されます。また、大きな音をきかないように注意することが必要です。また、後述する聴神経腫瘍の初期症状としても出てくることもあり、改善が悪い場合や反復する場合には確認のためCT、MRIによるチェックも必要になることもあります。

一般的にめまいは、体のバランスをとっている平衡神経系が、内耳・脊髄・目からの様々な情報を中枢で調整し、体のバランスをとっているのですが、これらの具合が悪くなると(腫瘍・出血・水腫・外傷・血流傷害など)体のバランスが悪くなり、めまいを生じます。
めまいが起こると何科の医者を受診するべきか迷われると思いますが、このように単一の臓器だけをみていては、全体像が理解できないわけで、平衡神経系を専門にしている医師でさえも、はっきり診断ができない場合もあります。
しかし、問診や可能な限りの検査を組み合わせることで病巣を推測し、加療していくことが大切になります。
また、長期に持続するめまいではリハビリも効果があることがあります。

突然におこる回転性めまい・耳鳴・難聴を来たす病気です。内耳に原因がある病気です。内耳は右左にあり、各々の内耳には蝸牛・前庭・三半規管があり、聞こえと体のバランスをとっています。ここに内リンパ管というものがあり、これが水ぶくれをおこして発症するとされています。上記のめまい・耳鳴・難聴・悪心・嘔吐がおこりますが、意識障害・運動麻痺・覚麻痺などはおこりません。
めまい、発作時は安静が一番です。診断・治療ですが、まず強いめまいを抗めまい剤で少し軽くして、少し動けるようになって受診される場合が多いです。鼓膜は正常で聴力検査では、病側の低音型感音難聴・耳鳴があり、中耳の働きをみるティンパノメトリーは異常ありません。
また、第8脳神経以外の症状すなわち、手足の運動麻痺・知覚麻痺・言語障害・意識障害などは伴いません。めまいの検査ですが、めまい時の眼球の異常な動きを、特殊なめがねで観察し、眼球の動きで内耳性か中枢性か・病側(右・左)などを推測し治療をします。内リンパ管の水ぶくれですので、利尿剤・ステロイド・血管拡張剤・ビタミン剤・抗めまい剤等が用いられます。中枢神経系の異常の有無を調べるため、CT・MRIが必要となることもあります。症状が改善しても、数ヶ月ないし数年後に再びメニエル病発作がおこるがあります。
再燃の頻度は個々により異なります。

内耳の病気で前庭、三半規管には、体の位置、運動を知るための耳石という小さな砂粒のようなものが内耳にあり、これが色々な原因でずれ落ちて、三半規管の中に迷入し、体動のたびにゴロゴロころがって、めまいをおこします。頭の位置の変化によって数秒ないし数十秒めまいがおこり落ちつきますが、動くとまた同様のめまいがおこることが特徴的です。
難聴・耳鳴はなく、特殊なめがねで眼球の異常な動きを観察することにより、三半規管のどれが問題を起こしているかを診断し、耳石置換法という整理体操をすることで治療することが可能です。

前庭神経炎、頚性めまい、循環障害、薬物中毒、貧血、自律神経障害、心因性めまい、などなどさまざまな原因によるめまいが考えられます。

超高齢化社会に突入していますが、体のすべての器官の機能は少しずつ老化してゆきます。目・足・腰をはじめ耳にも老化は進みます。若者も年ごとに、ごく少しづつですが、難聴が進んでいるのです。45~50才を境に年ごとの変化が増大していくと報告されています。これは原則として左右同程度の難聴で高音域に顕著に出現します。テレビの音を大きくする、時々聞き取りにくい、耳鳴などという症状ではじまります。
急に日常生活で困るということにはなりませんので、なかなか耳鼻科を受診する機会がありませんが、周囲の人々はコミュニケーションをとるのが疲れる・耳元で会話をされるようになる・TVの音量を家族に指摘されるなどがあれば疑ってみてください。
聴力改善する治療はないのですが、補聴器などの補助具の助けを借りると気分が楽になることもあります。
補聴器は、原理的には耳に入る音を大きくするだけですので、どんな種類の難聴にも有効というわけではありません。高度難聴の方の場合、補聴器から音は入るがはっきり言葉を聴き取りにくい、あやわかりしにくい、雑音が入りすぎるとかいうように、適合が難しい、充分に期待に応えられないこともあります。
50才をすぎたら一度、耳鼻科で自分の聴力を確認し、仕事の内容、家庭生活に合わせて使うことをおすすめします。耳鼻科でしっかりと検査をし、聴力障害の型を調べ、性能面、タイプ面で、また操作面でも各人にあった補聴器を決定していきます。しかし、すぐにベストの状態で使えるものではありませんので、使用しながら細かく調整し、装用の訓練をして自分に、役立つようなものにしてはじめて有効といえます。
平成17年から補聴器は管理医療器具となりましたので、耳鼻科医の診断・指示で、認定補聴器専門店の認定補聴器技能者によって補聴器の選択装用が義務づけられていますので、補聴器相談医にご相談ください。

音響外傷は巨大音、爆発音が耳の近くでおこり通常より大きな力が、内耳に加わって急におこる、難聴・耳鳴です。
発症に気付いたら大きな音をきかないようにして(イヤホーン、ヘッドホンはしない)、耳鼻科を受診し、診断をして治療をします。早期の治療が望ましいですが、加療が困難なことが多いです。また、治療中は耳の遮音も重要です。
騒音性難聴は、恒常的に騒音下の職場などで常にかなり大きな音の力が、内耳に加わって徐々に進行する、難聴・耳鳴です。
職場の検診で聴力検査がありますが、ひとつは会話音域の代表としての1000Hz、もうひとつがこの騒音性難聴をチェックするための4000Hzの検査です。日常会話はこまらなくても、程度をチェックし経過をみる必要がありますので、耳鼻科を受診して下さい。聴力検査によって4000Hzのみか、2000Hz、8000Hzまで障害を受けているかどうかを調べ、騒音が入りにくいよう、個別用の耳栓などをします。また、産業医の先生と相談し、騒音環境の改善が出来ればと思います。

耳鼻科医が見つけ出す可能性の高い脳腫瘍のひとつです。一般に中年以降の女性に多く、症状は徐々に内耳道、後頭蓋窩に腫瘍ができるためにおこります。徐々に進行する難聴、耳鳴り、めまい、味覚障害、顔面の知覚障害などが症状です。しかし、一部のものは、突発的に症状が、出てくることもあります。
注意深く診察し、この病気が頭の中にあれば、種々の検査(聴力検査・平衡機能検査・神経学的検査・CT・MRIなど)により小さなサイズの腫瘍でも見つかることも多くなっています。脳神経外科、耳鼻科で手術をします。腫瘍の大きさ、位置によって多少後遺症が残ることもあります。

顔の筋肉が動かなくなる状態です。ふつう、片側の麻痺が起こります。目がしっかりつぶれない、口から水がもれる、笑った顔がおかしい、額にしわがよらない、口がまっすぐ突き出せないなどの症状が出てきます。
中枢性か末梢性かの判断をし、末梢性であれば耳鼻科で、中枢性の可能性があればMRIをし脳神経外科などでの加療となります。
原因としては、原因不明のベル麻痺、ウィルスが原因のハント症候群、慢性中耳炎が原因の麻痺、外傷などによる頭蓋底骨折、聴神経腫瘍、脳梗塞などがあります。

急性中耳炎からひきつづきおこるものや、外傷にひきつづきおこることが多いです。耳だれ、鼓膜の穴、難聴などが症状です。急性中耳炎では、痛み、発熱を伴いますが、慢性中耳炎では鼓膜に穿孔があり、中耳、乳突蜂巣の炎症に伴う耳ダレがみられ、難聴、耳鳴、頭重感がおきます。
病原菌を調べ、耳ダレ停止のため耳の処置を行い、抗菌剤を投与します。おちついた時点で鼓膜の穿孔が残れば、聴力、耳ダレ対策として鼓膜穿孔の閉鎖の手術的療法を考えます。
また、特殊なタイプとして真珠腫性中耳炎、癒着性中耳炎、コレステリン肉芽腫症、頭蓋内合併症などでは手術が必須となります。慢性中耳炎の合併症として、内耳炎(難聴、めまい)、顔面神経麻痺、髄膜炎、敗血症、静脈血栓症など重篤なものがありますので、専門医での充分な管理、治療が必要です。

耳の下にある唾液をつくる組織です。耳下腺の代表的な疾患は、おたふく風邪の流行性耳下腺炎です。幼少時にかかることが多く、ウィルスによるものでうつります。大体両側がはれてきます。一度かかると再度感染することは基本的にありません。
耳下部の脹がとれて、口腔内のステノン氏管開口部充血がとれるまで、幼稚園、学校は休まなくてはなりません。予防にはワクチンがあります。
また成人男子が罹患すると、睾丸炎を合併し男性不妊の原因にもなる可能性があります。
その他に化膿性耳下腺炎、漿液性耳下腺炎もみられます。
また、耳下腺に出来る腫瘍もあります。良性・悪性とも発生します。通常片側です。良性でも悪性に変わることがあるため、発見した場合基本的には手術切除が基本となります。
耳下腺の働きが悪くなり、唾液の量が少なくなってくる病気もあります。シェーグレン症候群、ミクリッツ病などです。口が乾くようであれば嚥下にも影響しますので、一度耳鼻科で相談しましょう。