鼻の働き
人間は呼吸をして酸素を体に取り入れて生きています。その空気の取り入れ口が鼻です。何故鼻から空気を取り入れるのでしょうか。
外の空気が鼻の中を通っている間に空気中のゴミ、ホコリ、細菌などを、鼻毛、粘膜に吸着してこれらを取り除き、乾いた空気には水分を与え、加湿し、冷気を体温近くまで上げます。このような状態の空気は、のど・気管・肺などにとって大変良い状態の空気といえ、これらにとってやさしい環境といえるでしょう。
逆に鼻がつまって口から空気を吸い込むとどうなるでしょう。ホコリっぽい、乾いた、冷たい空気が直接、のど・気管・肺に入り、これらにとっては良くない環境といえるでしょう。例えば、鼻がつまった状態で一晩寝ていますと、朝起きるとのどが乾いて、いがらっぽくなっていることを皆さん経験されたことがあると思います。
鼻閉や鼻汁がそれぞれの疾患でおこり、鼻腔機能を低下させることにより鼻症状だけでなく、耳・咽喉頭・気管・肺にも症状を出します。
病気の解説
鼻の入口付近は、皮膚と奥の粘膜の境目となっています。
ついムズムズしたりして指でさわり、小さな傷ができて細菌が感染し、ただれたり、おできが出来たりします。さわらないようにしましょう。程度により塗り薬とか抗菌剤を用います。
あらゆる年齢の方が出血する可能性があります。最もよくみられるのは、鼻中隔(鼻を右左に別けるついたてのようなもの)の前のほうの部分に、毛細血管の多い場所(キーゼルバッハ部位)のただれがあり、そこの血管が破れて出血しているケースがよくみられます。特に小児においては、アレルギー性鼻炎、風邪などの基礎疾患を有する場合が多く、その治療と止血処置が必要です。
また血液疾患がかくされている場合もあり、全身検査が必要なこともあります。青年期においては特に男性であれば、鼻の奥のほうに血管性線維腫という腫瘍も注意が必要で、鼻咽腔の精密検査が必要です。高齢期になりますと、高血圧、動脈硬化、糖尿病などを伴うことも多く、血管そのものにも問題がおきていることがあり、止血処置のみでなく内科的なコントロールも必要とすることがあります。また、鼻・副鼻腔の悪性腫瘍よりの出血の可能性もあります。
以上のように色々の原因で出血するわけで、かくれた疾患、原因となる疾患に対処する必要があります。
止血のワンポイント
出血した場合、おちついて(血圧が上がらないように)、座って(横になると頭部がうっ血して出血しやすい)、鼻の中にティッシュなど入れずに、両側の小鼻を鼻の中央へ向かってじっとおさえたまま5~10分位そのままにしておいて下さい。その間、鼻から前へ出た血液はティッシュでふきとり、のどのほうへ流れてくる血液は、のみこまずに口から出して下さい。多くの場合はこれで止血すると思います。いったん出血したら、血管壁がやぶれていますので、それが修復をされるのに約1週間はかかりますので、その間鼻の中をさわらないようにして、出血させないようにして下さい。
急性副鼻腔炎は、一般にはいわゆる風邪(急性上気道炎)に伴っておきてくる、鼻・副鼻腔の炎症です。風邪は空気の通る道(気道)すなわち鼻・のど・気管・肺の病原体による炎症です。その一部として鼻、副鼻腔におこるわけです。症状としては鼻づまり・鼻汁・後鼻漏・頭痛・嗅覚障害などです。
副鼻腔は、鼻とつながっています。炎症により粘膜がはれ、副鼻腔の出入り口をふさいでしまうため、副鼻腔が閉鎖空間となり膿、粘液が貯留し悪循環をおこします。この出入り口の腫脹を直接的に処置するのがもっとも有効で、この部分を開放して、自然に膿、粘液がたまらないように送り出すはたらきを助けてやることが、もっとも理屈に合った合理的治療となります。また、その状態を無治療で放置した場合、慢性化し、慢性副鼻腔炎になります。いわゆる蓄膿症とよばれているものです。急性期をすぎていますので痛み、発熱はありませんが、慢性的につづく鼻づまり・頭重感・鼻汁・後鼻漏で、長くつづくと鼻汁がのどを通って気管、肺へ一部流入し、これらの炎症もひきおこし、慢性の痰、咳がつづく副鼻腔気管支症候群という病気になる可能性があります。
治療ですが、耳鼻科的専門処置である鼻汁を吸引し、副鼻腔・鼻腔の粘膜の腫脹を改善し、本来の鼻腔の状態にしてやり、空気の流れを作っていきます。また、鼻汁の性質により抗菌剤を使いわけ、消炎剤も併用します。マクロライド少量長期療法という治療法が、かなり良い成績を出していますので、以前よりは手術療法は、行われなくなってきています。しかし鼻腔が、鼻茸(ポリープ)で充満しているような強い病変では、やはり手術療法が必要になることがあります。
日本では、スギ花粉症で国民病のひとつとされています。
くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみなどが主な症状です。
アレルギーとは、何かの原因物質によってひきおこされる、体にとって不利な過剰な反応をする状態をいいます。実にさまざまなものが、原因(アレルゲン)となりえるのです。代表としてハウスダスト、ダニ、花粉類としてはスギ、ヒノキ、シラカンバ、カモガヤなどのイネ科の植物、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラなど、また、種々の真菌(アスペルギルス、カンジダ、ペニシジウム、アルテルナリアなど)、また職場独特のホヤなど、動物の毛、ソバなどの食品など多岐にわたっています。
診断は、やはり症状時期をくわしくきいてゆくことが大切です。また鼻の粘膜の状態は、副鼻腔炎など他の疾患と異なって特長がありますので、鼻の中を充分観察し正確な診断をつけることが大事です。ほぼアレルギー性鼻炎と同じ症状をもつ血管運動性鼻炎、風邪の初期、副鼻腔炎などですが、これらを区別して各々に適した治療法を選択します。
まず、アレルギー性鼻炎の診断をして、それから、次に何が原因物質(アレルゲン)なのかを調べていきます。その方法としてRAST(採血)になります。
治療としては、回避できるアレルゲンであれば、それをさける対策をしてください。
回避が困難な場合には基本的には抗アレルギー剤での内服・点鼻療法になります。
花粉類がアレルゲンとなっている方は、各々の花粉の飛ぶ時に症状が出るわけですので、花粉の飛ぶ時期、処置をしたり、薬の投与をします。
その他にはレーザー治療もあります。花粉症の季節の少し前にレーザーで鼻粘膜を焼灼することにより花粉が鼻粘膜に付着しても鼻汁反応が起こらなくなります。
これらの治療は症状をたちまちおさえるだけの対処療法にすぎませんので、治療をやめたりしますと、再び症状があらわれたりします。来シーズンには、再び症状が出てきます。最近は、花粉の飛びはじめる2週間位前から薬を服用し、アレルギー症状が出にくくするような予防、ないし季節前投与が望ましいです。また、抗ヒスタミン剤というアレルギーの薬は、人によっては眠気をおこすこともあり、運転をされる方はとくに気を付けて、医師の指導、注意をよく守って下さい。
以上の治療は対症療法になりますが、アレルギーの根治的治療として舌下免疫療法があります。現在ではダニとスギアレルギーの患者様が対象になっています。
RASTの検査を踏まえ、治療適応があるかを判断し、治療を選択します。
初回は30分の院内待機が必要ですが、その後は自宅での投与が可能です。
風邪などの後、鼻づまりがいつまでも続くことがあります。炎症の為、腫れて空気の通り道が狭くなり、鼻づまりを起こしたり、鼻汁が出ます。
この鼻づまりは、右側がつまったり、左側がつまったりします。鼻の処置で経過をみて、改善が悪いようなら肥厚した粘膜の切除も考えます。
特殊な場合としては、薬局などで市販されている鼻づまり用に購入される点鼻薬を使い続けると同じように粘膜の腫れがとれなくなる薬物性肥厚性鼻炎も起こりますので安易な使用は控えてください。
鼻の中にも癌ができます。
一側性の鼻症状(鼻づまり、膿性鼻汁、鼻出血など)がつづく場合は要注意です。また、鼻の奥のほうの違和感などがつづく場合は、一度耳鼻科の診察を受けることが大切です。早期診断、早期治療が大切です。
花、食物などの臭いがわからない人生もさびしいものです。色々な原因でおこりますが、臭いの分子が空気中を飛んできて、鼻の中に入り、嗅裂という鼻のてっぺんの部分に達してはじめてにおいを感じとれます。鼻の中のどこでも感じるわけではありません。鼻の色々の病気で鼻がつまって、臭いのもとがそこへ届かなかったら、臭いはわかりません。
また、臭いのもとがそこへ達しても、それを感じる神経が、退化している場合も臭いません。
どのような原因でにおわないのかをつきとめ、適切な治療が必要です。そのためには、鼻の中をしっかり観察することが大事です。
嗅神経は人体のなかでは唯一回復する可能性がある神経です。治療をトライしてみる価値はあります。
アデノイドのある場所(鼻咽腔)に出来る腫瘍で、大変見えにくい場所に出来るため、見落としやすい場所です。鼻の奥の方の違和感があったりすると要注意です。
これは特に思春期の男子に多い鼻咽腔血管線維腫という腫瘍や悪性腫瘍があります。鼻づまり、鼻出血、耳閉感(滲出性中耳炎)などの症状が起こります。
鼻・のど・気管・肺と空気の通る道、気道のアレルギーということでとらえ、下気道でおこるアレルギーが喘息になります。アレルギー性鼻炎同様に、何かに対して過敏な反応をおこして、呼吸困難を来たすわけですが、炎症が長引くと、純粋なアレルギー性反応だけでなく炎症反応も強くなり、痰などの分泌物も増加してきます。
鼻から肺まではone airway one diseaseと言われるようになっており、アレルギー性鼻炎に治療だけでは不十分であるし、喘息だけの治療でもだめであり、両方を組み合わせて治療していく必要があり、吸入ステロイドなどの加療の併用になります。
喘息が合併している場合は呼吸器内科との連携で加療していかないといけません。